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Interview

「生」と「時間」に向けられた眼差し。

2023.08.11
「生」と「時間」に向けられた眼差し。

この夏、SIRI SIRI Shopでは写真家・在本彌生氏の作品を迎えている。

本Magazineにおいても、ポートレート「自由の探求者たちへ」記事内で向井山朋子氏を撮影している在本氏。客室乗務員時代に写真と出会って以来、世界各地の衣食住と、その背景のなかにある美を収めてきた。

生命力みなぎる作品群はわたしたちを惹きつけてやまない。今回並ぶのは、奄美大島のダイナミックな波をとらえた作品群。そこには変幻自在の波の、大胆さと儚さとが映し出されている。波のグラデーションと質感がガラスのピースと調和し、これまでにない鮮やかな空間が生まれた。今回の展示作品の背景と、彼女が被写体に向ける視線について、話を聞いた。

インタビュイー=在本氏(以下A)、聞き手=木村(以下K)

波々 at SIRI SIRI SHOP
在本 彌生/ Yayoi Arimoto

写真家。アリタリア航空のCAとして勤務している頃、乗客に写真を勧められたことをきっかけに撮り始める。2006年独立。主な作品集に『MAGICAL TRANSIT DAYS』(アートビートパブリッシャーズ)『わたしの獣たち』(青幻舎)、『熊を彫る人』(小学館)。現在『Figaro』など連載の他、雑誌『TRANSIT』『BRUTUS』、カタログや広告など幅広く活動。

Instagram @yoyomarch

K:奄美大島の波を今回の展示の題材に選ばれた理由は?

A:水という要素がSIRI SIRIのガラスのジュエリーと親和性があると感じました。波は流動性のあるもので、その瞬間しか捉えることができない、非常に写真的な被写体です。その動きを見ていると、一瞬一瞬がものすごくドラマティックで。

籐のチョーカーは、旅先にも持参し、長年愛用しているという。

K:奄美大島へはコロナ禍に足繁く通っていたと聞きました。

A:久しぶりに島を訪れて、真っ先に撮りたいと感じたものが波でした。島内のあらゆる海岸を、さまざまな季節と時間帯に回って撮り溜めて。場所や季節、時間帯によって、色などの見え方などのバリエーションがものすごくあるんです。そのコントラストの素晴らしさを撮りたいと思いました。

K:『熊を彫る人』や旅雑誌の写真を拝見すると、ものをつくる人々への熱い眼差しを感じます。なぜ、彼らに惹かれるのでしょうか。奄美大島でもそうした出会いが?

A:ものづくりを含め、体を動かしている人は撮りたいと思わされますね。何かをつくっている姿は無垢そのもの。奄美大島では、撮影でご縁があった画家・絵本作家のミロコマチコさんや、彼女を通じて知り合った染色家・金井志人さんと交流があります。2人とも、奄美大島の自然あっての創作をしています。奄美大島は、海はもちろん、原生林も素晴らしいし、“地の力”が強いように感じます。

K:ものづくりへの関心は前職時代に培われたのでしょうか? 写真家としての活動との関係性についても教えてください。

A:元々民族的なものは好きでしたが、よく通ったミラノで、デザイン関係の仕事をする友人たちに出会ったのも大きいように思います。実はこういう分野がものすごい好きなのだと気付かされたんです。理系のことはわからないので実際に仕事にするのは難しいですが。プロダクトデザインのような、身の回りの設計を考えることが好きなんだと。

前職(客室乗務員)はサービス業ですから、自分の仕事によって何かが出来上がるということがありませんでした。それで、ものづくりやデザインに憧れを抱いていたんです。何かをつくることを仕事にしないにせよ、日々の暮らしの中で積み重ねていきたいと考えていたときに、たまたま写真に出会って。お客さまに撮ることを勧められたのがきっかけでした。

K:写真は在本さんにとってものづくりのひとつの形なのですね。
在本さんの写真は生のリアリティやエネルギーを感じさせるものが多いように感じますが、ご自身ではどのように捉えているのでしょうか。

A:ちょっと生々しいものや、生きているものが好きなんですよね。料理や花、果実のような、一瞬として同じ姿をしていないようなもの。

あとは、閉じているけど生きているもの。例えば石のような、かつては木や海が、長い長い年月をかけて形を変えたもの。そういうことに面白さやロマンを感じます。先日訪れたイタリアで、トラバーチンという大理石の建材を撮ってきました。これは日本の国会議事堂にも使われている石材なのですが、ニュートラルなクリーム色が空間にあると、すごく落ち着くんですよね。

K:かつてはそれが自然環境を構成するものだったからでしょうか。

A:そうです。石炭も、石器時代にわたしたち人間の周りに生えていた植物が堆積したもので、それらのエネルギーが塊となっている。

土を焼いて器をつくるという行為も、土の生命を昇華させていますよね。

K:そういう意味では、「閉じているけど生きているもの」はものづくりにも深く関係しているのですね。

A:SIRI SIRIのジュエリーにも、そこに通ずるものを感じます。

K:籐のように自然の素材をそのまま活用しているものもありますし、ガラスも、人工的に加工された素材とはいえ、分解していくと元は自然界に存在するもので構成されていますからね。

今話してきたような視点を持って波の写真を見てみると、海が絶え間なく陸地の形を変え続けていることや、長い目で見てわたしたち生命にも大きく関係してきたことに気付かされます。在本さんの写真には、「生」と共に、ある意味「時間」が映し出されているともいえるかもしれません。

長い時間の流れに思いを馳せながら、在本氏がダイナミックに捉えた瞬間の数々を、清涼感漂うSIRI SIRI Shopで体感してみてはいかがだろうか。

文 木村びおら
写真 小野奈那子
『波々』 - List of art works

*サイン入り、受注生産制。9/17まで受付、10月上旬配送予定。

『波々』
在本彌生 写真展 at SIRI SIRI SHOP
2023.7.15-9.17

期間中の営業日:金 土 日 1-7pm

波々 展示概要

「生」と「時間」に向けられた眼差し。

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